店舗や事務所のエアコンを選ぶとき、機器代の安い家庭用(ルームエアコン)で済ませられないかを検討される方は少なくありません。
小さな個室や、人の出入りが少ない部屋なら家庭用で足りることがあります。一方、客席・売場・待合室・執務室のように人が出入りし、長い時間運転する場所には業務用(パッケージエアコン)が向いています。この記事では、両者の違いと、どちらを選ぶかの判断材料、入替の前に確認しておきたいことを、店舗・事務所の空調工事を行っている立場からまとめます。
業務用と家庭用の違いは、能力・電源・室内機の形・使い方の前提
| 家庭用(ルームエアコン) | 業務用(パッケージエアコン) | |
|---|---|---|
| 能力の表し方 | 冷房能力(kW)と「〇畳用」の目安 | 馬力と冷房能力(kW)。例: 3馬力=8.0kW |
| 電源 | 単相100Vまたは単相200V | 三相200V(動力)が中心。小さい能力には単相200Vの機種もある |
| 室内機の形 | 壁掛形が中心 | 天井カセット形・天井埋込ダクト形・天吊り形・壁掛形・床置形 |
| 室外機との組合せ | 室外機1台に室内機1台が基本 | 1対1のほか、室外機1台に室内機2〜4台をつなぐ同時運転マルチ |
| 使い方の前提 | 住宅での使用 | 店舗・事務所で長い時間運転する使い方 |
| 法律 | 処分するときは家電リサイクル法 | フロン排出抑制法の「第一種特定製品」。使っている間の点検と、処分時の冷媒回収が義務 |
能力: 家庭用の「畳数の目安」は住宅を想定した数字
家庭用エアコンのカタログにある「〇畳用」は、住宅の部屋を想定した目安です。店舗や事務所には、お客様やスタッフの体温、照明、厨房機器、パソコンや複合機、窓からの日差し、ドアの開け閉めで入ってくる外気の熱が加わります。畳数の目安どおりに選ぶと、夏の午後に設定温度まで下がらないことがあります。
業務用エアコンは「馬力」で呼ぶのが一般的で、馬力ごとに冷房能力(kW)が決まっています。
- 1.5馬力: 4.0kW
- 2馬力: 5.0kW
- 2.5馬力: 6.3kW
- 3馬力: 8.0kW
- 4馬力: 11.2kW
- 5馬力: 14.0kW
- 6馬力: 16.0kW
必要な馬力は、広さだけでなく、業種・席数や人数・熱を出す機器・日当たりから決めます。当社では現地で部屋の使い方を伺ってから機種を選定します。
電源: 業務用は三相200V(動力)が中心
業務用エアコンの多くは三相200V(いわゆる動力)で動きます。すでに動力の引込みがある店舗・事務所なら、その電源を使って設置できます。動力がない建物では、電力会社への申込みと引込み工事が必要になり、機器の設置だけの工事より時間がかかります。動力は照明・コンセント用の契約とは別の契約で、基本料金も別にかかります。
小さい能力の業務用エアコンには単相200Vの機種もあり、動力のない小規模な店舗や事務所ではこちらを選ぶことがあります。

室内機の形: 天井の条件と部屋の形で選ぶ
- 天井カセット形: 天井に埋め込み、パネルから2方向・4方向などに吹き出す形。事務所・店舗でよく使われる形です
- 天井埋込ダクト形(ビルトイン): 本体を天井内に隠し、ダクトでつないだ吹出口だけが見える形。内装を優先したい店舗向けで、天井内に本体が入る高さが必要です
- 天吊り形: 天井から吊り下げる形。天井内に余裕がない建物や、天井の高い店舗・倉庫で使います
- 壁掛形: 家庭用に近い形の業務用。天井に手を入れにくい小さな部屋向けです
- 床置形: 床に置く形。天井にも壁にも付けにくい場所で使います
広い売場や細長い店舗では、1台の室外機に複数の室内機をつなぐ「同時運転マルチ」にすると、場所による温度のむらを減らせます。
店舗・事務所で家庭用エアコンを使うと起きやすいこと
- 能力が足りず、夏の午後や人が多い時間に設定温度まで下がらない
- 天井が高い・奥行きがある部屋で、壁掛形の風が届く場所に偏りが出る
- 台数を増やすほど、室外機の置き場・壁の配管穴・エアコン用の専用回路が台数分必要になる
- 営業時間中ずっと動かす使い方は、住宅での使用よりも機器への負担が大きい
また、家庭用エアコンの保証は家庭での使用を前提にしています。店舗や事務所で使う場合の保証の扱いは、購入前にメーカーの保証規定で確認してください。
家庭用で足りる部屋、業務用を選びたい部屋
家庭用で足りることが多い部屋
- 院長室・社長室・小さな事務所の個室など、住宅の一室くらいの広さで人の出入りが少ない部屋
- スタッフの休憩室やバックヤードなど、運転する時間が短い部屋
業務用を選びたい部屋
- 客席・売場・待合室・執務室など、人の出入りが多い部屋
- 天井が高い、または奥行きがある部屋
- 厨房・美容室のドライヤー・OA機器など、熱を出すものが多い部屋
- 1日の運転時間が長い部屋
飲食店は厨房の熱と換気で入る外気、美容室・理容室はドライヤーの熱と人数、クリニックは待合と診察室で使う時間の違い、事務所は人数とOA機器と西日、というように、業種によって見るところが変わります。
業務用エアコンを住宅で使う場合
業務用エアコンは住宅にも付けられます。ただし三相200Vの機種は動力の引込みと契約が必要になるため、住宅では単相200Vの機種を選ぶのが一般的です。室外機が家庭用より大きく重いので、置き場所と搬入経路、隣家への運転音も確認が必要です。
業務用エアコンの入替・新設の前に確認すること
- 今ある室内機・室外機の型番と製造年(本体の銘板で分かります)、台数、使っている部屋
- 電源の種類(単相・三相)と、ブレーカーの容量
- 今の冷媒配管をそのまま使えるか(配管の太さ・傷み・冷媒の種類)
- 室外機の置き場所と搬入経路(屋上ならクレーンが要るか)
- 工事できる曜日と時間帯(定休日・閉店後・早朝)
- 古い業務用エアコンを外すときの冷媒(フロン類)の回収
業務用エアコンはフロン排出抑制法で、使っている間の定期的な点検と、処分するときの冷媒の回収が義務になっています(環境省 フロン排出抑制法ポータルサイト)。当社には第一種冷媒フロン類取扱技術者が在籍し、フロン類の充填回収業者の登録も済んでいます。
修理で使い続けるか、入替えるかの判断は業務用エアコンの入替時期|修理か入替かの判断にまとめています。
当サイトの施工記録(業務用エアコン)
よくある質問
家庭用か業務用かは、どこで見分けられますか?
室外機や室内機に貼られている銘板(型番・能力が書かれたラベル)に「ルームエアコン」と書かれていれば家庭用、「パッケージエアコン」と書かれていれば業務用です。
事務所に家庭用エアコンを付けても問題ありませんか?
付けること自体はできます。小さな個室など条件が合えば家庭用で足ります。人の出入りや熱を出す機器が多い部屋では能力が足りなくなりやすいので、部屋の使い方から判断してください。
何馬力が必要か分かりません。
馬力は、広さに加えて業種・人数・熱を出す機器・日当たりで決まります。部屋の広さと用途、今の機器の型番をお知らせいただければ、現地で確認して機種と馬力をご提案します。
東池袋・板橋の自社技術者が、店舗・事務所の業務用エアコンの選定から設置・入替まで行っています。業務用エアコン工事のページもご覧ください。





